ジュンがいなくなってから庭に出ることがめっきり少なくなっていました。
特に冬は窓から覗くだけで、わざわざ何もない庭に出る気持ちは起きません。
しかし季節は進み、ふと庭に目をやると鮮やかな色が目に飛び込んできました。
庭のそこかしこに、冬にはひっそりと息を潜めて耐えてきた花が咲き始めていたのです。
若い頃は春にあまり魅力を感じませんでした。
しかし老いを感じる今は、ある種の憧れをもって命の輝きを春の中に感じるのです。
ジュンのいた庭は、ジュンがあまりにも命が輝いていたために、咲き誇る花たちの魅力が多少損なわれていたようです。ジュンのいない今、復権を図るかのように自己主張する美しい花々は、確かに命に輝いています。しかしそれはそれでまた、ジュンがいないことを改めて思い出させ、涙がこみ上げても来るのです。
庭に出るといつもジュンが傍らにいてくれました。
ケンタがジュンのように、この庭を僕の庭として歩き回るのはいつのことでしょうか?