ネットワーク環境の整備

ケンタが亡くなってから早3ヶ月近く。
犬望のあったケンタの遺骨と遺影は、つい最近まで、お友達から頂いたたくさんの花々に包まれていました。
亡くなった当初はもちろんのこと、未だにケンタの様々な想い出の写真を見ながら涙を流す毎日です。本当に大きな存在を失ってしまったという実感が日々増しています。

その大きな空っぽの空間を少しでも埋めないことには、毎日の生活が辛くて耐えられません。ケンタの看病で疲れ切っているはずなのに、つい最近まで夜あまり眠ることができませんでした。
そこで、ウォーキングをしたり、ガーデニングをしたり、音楽を聴いたり、ビデオを観たりと、気を紛らわせようと意識的にしてきました。
その一環として、ケンタの看病に忙殺されて全く手付かずだった趣味の一部にもようやく取り掛かることにしたのです。

それは我が家のネットワーク環境の整備でした。

コロナパンデミックの長期化で、インターネット利用が急増し、回線の混雑による遅延が深刻化してきました。
今まで一般に普及していたPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)は電話回線を前提として開発された旧式の方式で、現在のような光回線を介した大容量伝送には全く適していない方式です。
それを解消するためにだいぶ前からIPoE(Internet Protocol over Ethernet)が展開されてきたのですが、IPoEはIPv6だけに対応しており、IPv4でPPPoEで運用してきたシステムでは利用できません。徐々にIPv6も浸透しつつありますが、現時点では世の中の大部分がIPv4のPPPoE通信で占められているのが実情です。

そこで過渡期の対応策として考えられたのが「IPv4 over IPv6」です。
この技術では、ブロードバンドルーターでIPv4のパケットデータをIPv6に変換し、「IPv6に見せかけたIPv4」のパケットは、IPv6通信網を抜け、通信先のWebサイトやWebサービスに到達する直前でIPv4へと再変換されます。IPv6の仮想のトンネルを抜けていくため、この技術は「トンネリング」と呼ばれています。このようにトンネリングをすることで、IPv6に対応していないIPv4のWebサイトやWebサービスでもIPoE方式で扱うことができ、伝送を高速化することができるわけです。

「IPv4 over IPv6」に対応するプロバイダーは今ではたくさんあります。
しかし接続方式が3つありそれぞれの特徴を理解した上で選択する必要があります。
「4rd/SAM」と「MAP-E」は任意ではありませんが、ある決まったポートの解放ができます。一方の「DS-Lite」はポート解放はできません。
また、ルーターも「IPv4 over IPv6」に対応し、3つの接続方式に対応するかどうかを確認して選ぶ必要があります。

私の場合は以前「DS-Lite」方式のプロバイダーと契約していたのですが、今回は将来必要になるかもしれないポート解放が可能な「MAP-E」方式のプロバイダーで、比較的メジャーなBiglobeを選びました。しかし選んだ後で気付いたのですが、Biglobeが提供するIPv6オプションは、JPNE社の設備を使用する一般的なV6プラスと違っていて、Biglobe独自の設備を使用するもののようです。それによってどのようなメリット・デメリットがあるのかは現時点で分かりません。
そしてそれに対応するブロードバンドルーターとしてBaffaloのWSR-1166DHPL2を選びました。私としては初めてのBaffaloルーターです。

設定は極めて簡単。
PPPoEのタブで接続先を登録し、Internetのタブで「IPv6オプションを使用する」を選択するだけです。

これで「IPv4 over IPv6」で簡単に繋がります。
BiglobeはPPPoEでも日中は200Mbps超えが普通ですが、夕方から夜になると一挙に一桁通信速度が落ちます。しかし今回のIPv6オプションでの接続では、日中は300Mbpsが当たり前、夜になっても200Mbps前後を維持しています。
もう普段はPPPoE接続には戻れませんね。

普通にはこれで一件落着、満足満足で終わりになるのですが、私の場合にはちょっと事情が違います。
実はSynology社のNASを2台運用しており、その1台でWEBサーバーを立ち上げているのです。
WEBサーバーを公開するにはHTTPでやり取りするための80番ポートと、HTTPSの443番ポートの解放が必要になります。これは「IPv4 over IPv6」接続では不可能なことで、PPPoE接続が必須になります。
要するに私の場合には「IPv4 over IPv6」とPPPoEの併用が必要になるということです。
これを実現するための方法は色々ありますが、私は次の方法を選びました。これであれば比較的安価で今までのホームネットワークのシステムを大きく変更することなくスマートに実現できます。

要するにWSR-1166DHPL2にPPPoEパススルーでもう一つのブロードバンドルーター、Aterm 1200HP3をぶら下げるのです。
ですからWSR-1166DHPL2には次の設定を追加します。
また、Aterm 1200HP3のDHCPサーバ機能は必ずOFFにしておきましょう。さもないとWSR-1166DHPL2のDHCPサーバ機能とバッティングを起こしてネットワークがハングアップしてしまいます。

WSR-1166DHPL2のLAN端子とAterm 1200HP3のWAN端子をLANケーブルで繋ぎ、Aterm 1200HP3をホームネットワークに組み入れるためにWAR-1166DHPL2のLAN端子とAterm 1200HP3のLAN端子もLANケーブルで繋いでおきます。

そして以下のようにAterm 1200HP3の設定で80番と443番のポート解放を行います。

LAN側ホストにはWEBサーバーを立ち上げているSynology NASのIPアドレスを記入します。

そしてSynology NAS側ではゲートウエイアドレスの変更を行います。この場合はAterm 1200HP3のアドレス、例えば192.168.0.100ということになります。

これでホームネットワークの中で、WEBサーバーが起動しているSynology NASだけがIPv4のPPPoEでインターネットと通信ができるようになります。

その状態を示した我が家のホームネットワークの概念図が下図です。

要するにこのホームネットワークの中で、ゲートウエイアドレスをAterm 1200HP3のものに変えさえすれば、どの機器でもPPPoE接続が可能になるのです。もちろん必要であればポート開放はその機器ごとにしなければなりません。

こうして「IPv4 over IPv6」の高速なインターネットアクセスを享受しながらWEBサーバーの公開も可能になりました。