ケンタのてんかん(癲癇) その後

前回はコンセーブ100mg錠を1回につき2錠に増量してから発作が起きていないところまで書きました。しかし無発作が16日間続いたその直後、7月6日8時半頃、私のくしゃみがきっかけになって2分前後続くひどい全身発作が起きました。更にわずか30分後にまた発作発生。ほとんど重積状態で非常に危険な状態です。
急いで動物病院に連絡し往診してもらってフェノバルビタール100mgを筋肉注射してもらいました。それから1時間ほど徘徊したり吠えたりと落ち着かないケンタでしたが、ようやく寝てくれました。

先生と相談してコンセーブを2.5錠に増量することにしましたが、この時点で私はそもそもケンタのてんかんにはゾニサミドは有効ではないのでは?という根本的な疑問を持っていました。
コンセーブを1錠、1.5錠、2錠と増量してきましたが、その増量の効果は全く感じられず、フェノバルビタールの注射をした時だけ発作が抑えられ、その半減期が過ぎると再び発作がぶり返すことが繰り返されているような気がします。要するにケンタのてんかんには、ゾニサミドではなくフェノバルビタールが反応していると思うわけです。

ゾニサミドについて調べた記事の中にはゾニサミドの有効性の試験に使われた犬の中に数頭、むしろ発作が増加した例があるとの記述がありました。
そもそも特発性てんかんは、その原因が不明であることからその治療も手探りで、試行錯誤的に行わざるを得ません。ある例では有効な抗てんかん薬も、別の例では全く無効であったり逆に悪化させる可能性も否定できません。
いずれにしても、ある抗てんかん薬で有効性を確認できなかった時には、それと作用機序の異なる別の抗てんかん薬を躊躇なく試してみるべきだというのが私の基本的な考え方でした。

その後も7月8日までケンタの発作の頻度は急上昇し、小さな発作を入れれば数えきれないほどになりました。
そこで意を決して病院へ行き、私の意見を説明してコンセーブからフェノバルビタールに切り替えることにしたのです。切替は当日(7月8日)からで、1回あたりフェノバルビタール30mg3錠(ケンタの体重を28.5kgとして3.16mg/kg)を1日2回与え、コンセーブは1週間は1錠に減量、それ以降は中止することになりました。推奨される初回のフェノバルビタールの投与量は2〜3mg/kgとされているのでほぼガイドライン通りですね。
フェノバルビタールはコンセーブに比べて血中濃度が安定化するのに時間を必要とします。半減期がゾニサミドは15時間程度に比べ、フェノバルビタールは32時間から64時間と長いためです。安定化にはコンセーブが5日程度なのに比べて7日から14日程度かかるようです。ですから効果を評価するのは2週間後くらいになるのでしょうね。

フェノバルビタールの投薬を始めてから今日で5日目になりました。
その間のケンタのてんかん発作の変遷は非常に明瞭です。全身発作がなくなり、顔面だけの焦点発作に移行し、更にその焦点発作の程度と頻度が日々減少して行きました。
今日はその焦点発作もほとんど気がつかないレベルにまで減衰したようです。今のところ予想通りの実に理想的な経過を辿っているように見えます。

全身発作がなくなり、ケンタへのダメージが回避されていることは嬉しい限りですが、当面困っているのはフェノバルビタールの副作用と思われる四肢の運動能力の喪失で、特に後脚の自由が効かなくなっているため歩行が困難になってしまったことです。
当初は食事をさせたり、水を飲ませたりするのにも苦労しました。排尿排便も大変で、マナーベルトにオムツを常時着用、排便は外でしかしないので介護用ハーネスで吊るすようにして外に連れ出し、汗だくになりながらさせました。間に合わずに室内でしてしまったことも最初は何度かありました。
でもこの副作用は一過性だと思います。日々四肢の動きは力強くなっていて、今日は家の周りを支えなしに自力で歩いて2回も排便し、水も支えなしに床に置いてある容器から自力で飲めるようにまで回復してきました。

フェノバルビタールの副作用で最も心配なのは肝毒性です。これはフェノバルビタールの血中濃度が35μg/mLを超えると、長い投薬ではほぼ確実に発現する重大な副作用で、この副作用を抑えるためにできるだけ低濃度で発作をコントロールできるかどうかが治療の成否の鍵です。最大でも30μg/mL以下の濃度に抑えられるよう、血液検査で確認しておく必要があります。

今までも期待しては裏切られてきたのでそれほど楽観はしていませんが、これがダメでも次の手も考えて用意してあります。
それは臭化カリウムの追加です。
フェノバルビタールと臭化カリウムの組み合わせは古典的な手法ではありますが、ある文献には低用量のフェノバルビタールと高用量の臭化カリウムでてんかんの95%をコントロールできると記述されていました。どうやらフェノバルビタールと臭化カリウムの作用機序が似ているので作用を増強する効果があるようです。
この組み合わせで更にありがたいのは、高用量のフェノバルビタールの重大な副作用、肝毒性を回避できる道が開かれることです。これも動物病院の先生には提案済みで、すでに臭化カリウムも準備できていていつでも利用可能です。

ケンタのてんかんとの闘いは始まったばかり。
次に報告する時がどうなっているか予断を許しません。
でも私の全てを注ぎ込んでケンタのてんかんに立ち向かうつもりです。

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