ケンタの受難 てんかん(癲癇)

ケンタは11歳。もう立派な老犬です。でも普段はその活発な動作からはとても老犬という雰囲気は伝わってこないほど元気でした。むしろパピーのように感じてしまうこともあるほどでした。

ところが、去る5月に狂犬病予防ワクチン接種してから状況は一変しました。

過去10回の接種では何も問題がなかったのに今回だけは違いました。
接種した翌日からケンタの元気は失われ、しかも落ち着きがなく不安そうで、ハアハアと荒い息遣いであちこちを彷徨き回るようになりました。夜になると、いつもであれば寝室にあるケージで大人しく寝てしまうのに、ケージから出ては彷徨き、落ち着きません。仕方ないので居間に連れて行き、私が安楽椅子で寝ると足元の布団に横たわってようやく眠ってくれました。

元気がない状態は4日間くらい続きました。少し元気になってきたので散歩を少し再開したら、今度は以前問題だった前脚の引きずりが出るようになりました。アンチノール ですっかり治っていたのに再発です。でもこれは2日間ほどで回復。すっかり元気になって、ほぼ狂犬病の予防ワクチン接種前の状態に戻りました。

それからほぼ1週間後、度肝を抜かれるような経験をすることになったのです。
ママと昼食を食べていた時、そばでうたた寝をしていたケンタが突然歯を食いしばるような表情を見せたかと思ったら全身が硬直し四肢が痙攣し始めたのです。口からは大量の涎と泡が出てこのまま死んでしまうのではないかという恐怖を覚えるような様子でした。

とっさにてんかん発作だと分かったので静かに見守るとともに、ママは動物病院の先生に連絡してきてもらうことにしました。
発作は2分ほど続いたでしょうか?先生が来られた時には治まっていましたが、てんかん を抑えるための注射をしてもらいました。後で知りましたが、有名な抗てんかん薬、フェノバルビタールだったようです。

その時のビデオではありませんが、その後も何回か同じような発作に襲われた時に撮影した例を掲載しておきます。どなたかの参考になれば幸いです。

翌日も軽い発作が起きたためてんかんの治療を開始することにしました。てんかんには特発性と症候性があってそれを確定するには様々な検査が必要です。特に症候性てんかんは脳腫瘍などの原因があって発生するもので、その原因を除去できればてんかんは完治します。しかし特発性てんかんは全く原因が不明のてんかんで、完治は望めず、一生抗てんかん薬のお世話にならなければならない病気です。

ケンタの場合、高齢であることで麻酔が必須のMRIや脳波、その他の検査が大きなリスクになるのと、たとえ脳腫瘍だと分かったところで完治が望めるとはとても思えないことから特発性てんかんを前提とした治療を開始することにしました。

一昔前、あるいは西欧では、抗てんかん薬の主流はフェノバルビタールでしたが、長期間の使用で肝臓に対する副作用が発現しやすいのと徐々に薬効が弱まる傾向があるとの指摘がされていたようです。近年日本においてゾニサミド系の抗てんかん薬が開発され、副作用があまりないこととフェノバルビタールに勝るとも劣らない効能を発揮することから国内では抗てんかん薬の主流を占めるようになっているようです。ただ非常に高価なので大量に必要な大型犬にはちょっと辛い選択ではあります。まあ背に腹は変えられないということです。

今回のケンタのてんかんにもこのゾニサミドが処方されました。コンセーブという商品名の錠剤で、1錠中ゾニサミドが100mg含有されているものです。

初回の投与は2.5mg〜5.0mg/kg/回を1日2回から始めるようで、ケンタの体重が28〜29kgなので100mgを1回あたり1錠であれば3.5mg/kg/回になります。

コンセーブの投薬は5月25日の夕食から開始しました。それから5月30日までは発作が出ませんでした。しかし5月31日に日付が変わった直後、0時20分頃ケージの中で全身発作。やはり2分ほど続きました。朝散歩の前に動物病院に寄って状況を話したところコンセーブの増量を指示されました。1.5倍です。1.5錠ということですね。5.2mg/kg/回ということになります。念のために血漿中のゾニサミド濃度も調べることにしました。薬を飲ませたばかりなので最高濃度になっていると想定されることは考慮しなければなりません。トラフ値ではないのです。

血液検査の結果は6月3日に知らされました。14.5μg/mLでかなり低い値。トラフ値では10μg/mL程度で下限ギリギリなのかもしれません。一応ゾニサミドの有効範囲は10〜40μg/mLとされているのでさらなる増量が必要なのだと思います。

その後6月1日までに4回も全身発作が発生。ケンタはヨレヨレです。意識が朦朧としているのでお漏らしをしてしまいます。躾を全て忘れてしまったかのようでペットシーツでおしっこができなくなってしまいました。仕方ないのでマナーベルトをずっと着けなければならなくなりました。抗てんかん薬と注射の副作用で足腰も弱くなりフラフラ。時々支えきれずに尻餅をついて倒れてしまうこともあります。

6月1日の発作を最後に6月17日までは発作が起きませんでした。この間はコンセーブを毎回1.5錠投薬でした。
しかし6月18日に2回、6月19日に3回の発作が立て続けに起きコンセーブの増量をすることになりました。1回2錠。
6月20日に8時頃に1分半ほどの全身発作と夕方に軽い顔面の部分発作。それ以後6月30日まで発作は起きていません。薬の副作用も少しずつ薄れたのか、足取りはしっかりしてきました。意識もしっかりしていて以前のケンタを取り戻したようで私のコマンドをよく聴き取ります。もうオムツはしていません。
ゾニサミドが十分な濃度になって効果を発揮してきたのか、まだ油断はできません。今のところ1.5錠と2錠の間にてんかんの閾値があるように見えます。そろそろゾニサミドの血漿中濃度を測ってみるべきかもしれません。その時は投薬前のトラフ値を測定するように気をつけなければと思っています。

資料によればコンセーブのゾニサミド半減期は15時間程度となっているので、朝晩12時間周期の投薬では投薬直後と投薬前でかなりの濃度差があると思われます。濃度が最低になる投薬前のトラフ値がどの程度の値になっているかが重要で、ケンタの場合、せいぜい20μg/mL強程度ではないかと想像しています。マージンを見るのであれば25〜30μg/mL程度は欲しいところです。おそらくケンタの場合にはコンセーブ100mg錠を1回につき2.5錠が適量なのだと推測できます。現在はゾニサミド濃度が最低になる投薬前の朝晩が緊張する時間帯になっています。

6月21日午後4時過ぎ 我が家の庭にて
てんかん明けでぼんやり、力が出ずにフラフラ。

長い闘いになると思いますが当面の目標は全身発作が1ヶ月に1回くらい。次に3ヶ月に1回くらい。そして半年に1回くらい、、、と少しずつ軽減されてくれることを願っています。少しでもケンタの苦しみを軽減できればそれ以上は望みません。今のところ抗てんかん薬が多少なりとも効いてくれているようで、ようやく一休みできている感じです。この平穏が1日でも長く続きますように、、、

それと来年以降の狂犬病ワクチン接種は免除してもらうことにしています。他の伝染病ワクチンもできるだけ接種しないようにと考えています。老犬になりドッグランにも行かなくなるので無用な負担をケンタに負わせたくないのです。

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