The Sociopath Next Door 良心をもたない人たち

もうかれこれ60年ほど前の少年の頃、ロゲルリストという物理学者集団が、日常目にする様々な現象を科学的に解き明かして説明してくれる「物理の散歩道」に熱中したほど、元々物理系の分野に興味があった私ですが、ここ10数年ほどは社会学、あるいは心理学分野への興味が強くなりました。
多分安倍政権が最初に誕生したあたりからだと思います。
なぜあれほど危険な人物を国の運営の最高責任者に選ぶのだろうという素朴な疑問が出発点だったような気がします。

そして今、政権に返り咲いたその人物が7年以上にわたって日本を支配する状況になっています。今や日本は法の支配から権力者が直接支配する国へと変貌を遂げました。

かつて戦前戦中を通じて絶対権力者であった天皇と、その命を受けたと称する準権力者が超法規的な行動を我が物顔で行使していました。その結果は日本の歴史始まって以来の国家消滅の危機でした。

大した年月が経っているとは思えない現在、その状況と非常に似た日本があります。人はなぜ何度も、一度は金輪際御免だと思い知った過ちを簡単に繰り返してしまうのでしょうか?

その一つの回答になるかもしれないのが今回読んだ、マーサ・スタウトの原題「The Sociopath Next Door」の翻訳本でした。

そこには信じられないことに、あの「良心」を全く持たない人々が、少なくともアメリカでは4%も存在するという事実が記されていました。「良心」の完全な欠落状態は、「良心」を持った普通の人々には全く想像すらできません。この本ではそれを理解させるために様々な例や物語を丁寧に紹介しています。そしてこの本では彼らを「サイコパス」と定義づけています。「ソシオパス」とも言うようですがその違いはあまりないようです。

「サイコパス」の特徴は
1. 社会的規範に順応できない。
2. 人をだます、操作する。
3. 衝動的である、計画性がない。
4. カッとしやすい、攻撃的である。
5. 自分や他人の身の安全を全く考えない。
6. 一貫した無責任さ。
7. 他の人を傷つけたり虐待したり物を盗んだりした後で、良心の呵責を感じない。

精神医の多くは、このうち3つが当てはまれば反社会性人格障害を疑うと言います。なんだか我が国の重要ポストにいる人がほとんど全部当てはまっているような気がしてゾッとしています。

研究者の中にはその他の特徴として

8. 口の達者さと外見上の魅力

をあげる人もいます。口の達者さは詐欺師の中に見られる特徴でもあるわけで、これも気になる人に当てはまる特徴ではあります。

「サイコパス」はIQとは全く関係なく、天才的な人間から極めて思考能力の乏しいものまで偏在しています。よく海外のサスペンスドラマや事件物に登場する冷酷な連続殺人者は極めてIQの高い「サイコパス」を扱っているのですが、こういう例は実際には極めて稀なようで、IQの高い「サイコパス」はそんな危ない橋は渡りません。常人との違いが目立たないように巧みに隠して社会に溶け込み、自らの欲望を叶えるべく冷酷にことを運びます。

そして著者は言います。

歴史を振り返ると、良心をもたない指導者が国民の良心に催眠術をかけて、大きな破局をもたらした例が何度もあると。

そして有名なミルグラム実験を紹介しています。

良識と良心を持った一般人がどれだけ残酷になれるかを実証したものです。実験の詳細についてはリンクを参考にしてください。要するに人間の良心は権威からの命令によって簡単に崩れてしまうものなのです。
その極限状態が戦争です。ごく普通の人が戦場で殺戮を繰り返す。この恐ろしい光景が人類の歴史の大半を塗りつぶしているのです。

この本で取り上げられているアルバート・アインシュタインの言葉が非常に心に残りました。まるで今の日本国民の一人一人に向けられた言葉のように感じました。

「世界が危険な場所であるのは邪悪な人間がいるからではなく、それに対して何もしない人たちがいるためだ」

「サイコパス」は先天的な遺伝によるところが50%、残りの50%はまだ十分には解明されていないものの社会環境が影響するようです。したがって従順でおとなしく、平和的な状態を好む東アジアでは「サイコパス」の比率は欧米などに比べて非常に少ないとのこと。欧米が4%という高率であるのは、「サイコパス」の神経生物学的特徴を助長するかのように、暴力、殺人、戦争挑発行為を奨励する傾向があるからのようです。

しかしそれも昔の話。今では日本はどんどん米国に近づいています。特に強烈な衝撃を与えたのは2016年7月に起きた相模原障害者施設殺傷事件でした。犯人は安倍政権に強いシンパーシーを感じていたようで、自民党議員の差別発言に共感していたようです。安倍政権になって急速に拡大した感のある嫌韓、ヘイト、差別の風潮は、かつての日本では考えられないような殺伐とした社会環境の激変です。これが「サイコパス」の起爆剤になっているかも知れないという予測もあながち見当違いとは言えないでしょう。

「サイコパス」は「サイコパス」を呼ぶ、類は友を呼ぶと同じことが起こりつつあるのではないかといささかゾッとした気持ちに囚われています。

最後に著者は「サイコパス」に対処するための13のルールを提案しています。
全て非常に示唆に富むものなのですが、特に目についたものを一つだけ紹介します。

1回の嘘、1回の約束不履行、1回の責任逃れは、誤解ということもあり得る。2回続いたらかなりまずい相手かも知れない。だが、3回嘘が重なったら嘘つきの証拠であり、嘘は良心を欠いた行動の要だ。傷の浅いうちにできるだけ早く逃げ出したほうが良い。

どうでしょう?
国会中継を見ている人ならすぐに分かりますよね。我が国の現在の総理大臣その人にぴったりと当てはまるではありませんか?

国民の皆様、くれぐれもご用心を!