安倍官邸 VS. NHK

簡単に言うとNHKの内部告発の書です。

NHKは世論形成に非常に大きな影響力を持った巨大メディアです。
その強大な力は主として受信料から得られる7000億円を超える豊富な資金に支えられています。

その受信料ですが、非常に不思議なことにNHKは、公共性が高いからという理由で他のメディアにはない特権を持っています。
受信料をほぼ強制的に全世帯から徴収できるのです。
これは最近最高裁で合憲と確定した、本当に不思議な権利です。
民放の有料放送は希望者からしか徴収しません。視聴しない人から強制的に徴収することなどあり得ません。

ところがNHKは、視聴しなくても強引に取り立てるのです。視聴しない世帯には電波を止める、あるいは民放のようにスクランブルをかけて視聴できないようにするのが道理だと思うのですが、視聴しない人からも一方的に受信料を取り立てます。誰が考えてもおかしな仕組みですよね。しかもそれを合法とするのですから最高裁判決には呆れ返ります。
公共性が高いのは何もNHKに限った話ではありません。電気、ガス、水道などは使った分しか料金を徴収されないですよね。料金を支払わなければ止められるだけです。

そんなNHKですが、公共放送としての自分たちの責任の重大さを認識しているのかどうか非常に疑わしい姿勢が顕著になってきました。
本当に公共放送なの???と疑われてもおかしくない異常な姿勢です。

その疑問の一部が今回読み終わった「安倍官邸 VS. NHK」という本に詳細に記されています。著者は元NHK記者の相澤冬樹氏。本当の記者魂を持った熱血漢といった人物でしょうか?

これを読むと取材現場や報道現場の人々の真実を追求する熱意や誠実さがよく分かります。その一方で上層部のあまりにも不可解で一方的な統制に疑念が募る一方です。でも今のNHKの体制を知ればさもありなんということがよく分かります。

もともとNHKの取材力には定評がありますが、相澤記者をはじめ優秀な記者を多数有し、豊富な資金でどこのメディアもかなわないような特ダネを連発する実力を持っていることが改めてよく分かりました。
しかし現在のNHKはその現場の実力が全く発揮されない状態に押さえ込まれているのです。現場の悔しさは並大抵のものではないでしょう。長年NHK記者として誇りを持って活動してきたベテラン記者の相澤氏が転職を余儀なくされるほどに、今のNHKの状況は異常なのです。

NHKの近年の異常な報道姿勢は以前のブログでも度々取り上げました。本来の報道姿勢に戻ったり、また異常な隠蔽報道になったりと、不安定な報道姿勢が続きましたが、現在は完全な国営放送になってしまいました。
この不思議な経緯の原因は、この本で赤裸々に綴られたように、現場の真実の報道への誠意と熱意が、真実を隠蔽しようとする権力の圧力と戦っていたそのままの状況を反映したものだったことが明らかになったのです。

次の事実も国民の大部分が知らないのでしょうが、実は安倍政権のNHKへの介入は今に始まったことではありません。2001年安倍晋三氏は中川昭一氏とともにNHKで放送予定のETV特集「問われる戦時性暴力」の内容が気にくわないということでNHK幹部を呼びつけ内容を改変させたということが朝日新聞にすっぱ抜かれました。
これに関連した当事者の告発本も出版されています。
永田浩三氏の「NHK、鉄の沈黙はだれのために―番組改変事件10年目の告白」は当時の状況を赤裸々に綴っています。

味をしめたのでしょうね。圧力をかければNHKは自在にコントロールできると、、、
それが今のNHKの異常な報道姿勢の原点です。

NHKはもはや公共放送などと呼べるものではありません。
中国や北朝鮮のような国営放送と呼ぶべき存在です。
また戦時中のような大本営発表を繰り返すことになってしまいました。

まあNHKだけではなく、大手メディアは一部の例外を除いてほぼNHKと似たり寄ったりの状況だとは思います。政権と大手メディアの幹部が頻繁に集まって飲み食いしているなんて、民主主義先進国の欧米では信じられない光景でしょう。一緒にコーヒーを飲むことさえもしないのですから。原始的な国ですよね、日本は。とても民主主義国家なんて言えません。

さらに問題なのは視聴者が放送される内容を何も検証することもなく鵜呑みにしてしまうことです。言い換えれば簡単に扇動に乗ってしまうということです。
大切なのは自分の頭で考えること。国は必ず嘘をつくしメディアは必ずしも全て真実を報道するわけではないことを肝に銘じるべきでしょう。

日本は本当に意識レベルの低い愚かな国だと思います。痛い目を見ても一向に反省し改めることがない。世代が変わると今までの教訓が全てリセットされてしまう。公文書や歴史を平気で改竄修正するような国は過去に学んで進歩することなど到底できませんね。

追記
NHKがどんどん変質していきます。
NHKの良心と言われていた部署が解体されそうです。
詳しくはこちらをご覧ください。
NHKの受信料をますます支払いたくなくなりました。