矢部宏治さんの「日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」を読みました。
さすがに話題になっている本だけあって素晴らしい内容です。
社会で起こる様々なことに対する多くの疑念が、一つに収斂したような感じです。
そしてやはりそうだったのかという納得感。
結論から先に端的に表現するなら、日本は実質的にはまだアメリカの占領下にあり独立国ではないという事実です。
最近話題になることの多い「砂川裁判」、この最高裁判決は米軍による日本の実質的な占領状態を決定的にしたものでした。
在日米軍の合憲性を問われたこの裁判は、アメリカ政府の圧力により、日米安保条約のような高度な政治的問題については最高裁は憲法判断をしないという判決を下したのです。
これによって安保条約とそれに関する取り決めが、憲法を含む日本の国内法全てに優越することになってしまったのです。
従って在日米軍が日本国内では何をやっても日本の憲法や法律で規制することができないのです。まさに占領下の日本の状態と全く変わりませんね。
そしてこの判決以降、政治的に極めて重要な国家の統治に関わるような問題については司法は判断を留保するという、所謂「統治行為論」が使われるようになりました。
これは言ってみれば、司法の最大の存在理由である司法審査権を全面的に放棄することであり、司法はもはや法の番人として機能しないということになります。それを証明するかのように、最高裁は政府が関与する人権侵害や国策上の問題に対して絶対に違憲判決を出しません。
最近、安保法制が違憲であるという憲法学者が多数であるのにもかかわらず、政府が合憲であると強弁し、最後は最高裁の判断に委ねられると口を揃えて言うのも、このような最高裁の状況を踏まえてのことだと思います。
安保法制の合憲性を問う裁判を最高裁に委ねても、間違いなく違憲という判決は出ないでしょう。もはや司法はその役割を全く果たしていない形骸化した存在なのです。
そしてこの本では、現在の最高裁は、日本国憲法第81条「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」に完全に違反した存在であることが明らかだとしています。皮肉なものですね、憲法を守る最後の砦が憲法違反状態にあるとは!
とにかくアメリカと結んだ「密約法体系」が憲法に優先する日本の最高法規になっているのです。
「安保条約のもとでは、日本政府とのいかなる相談もなしに、米軍を使うことができる」
「米軍の部隊や装備なども地元当局への事前連絡さえなしに日本への出入りを自由に行う権限が与えられている」
「新しい基地についての条件を決める権利も、現存する基地を保持し続ける権利も、米軍の判断に委ねられている」
アメリカの機密解除になった公文書で明らかになった密約の一部です。
これで何で日本に原子力潜水艦や空母、最近ではオスプレイなどが当然の如く自由に出入りしていることが分かるでしょう。至る所に米軍の基地があり、日本の空は100%米軍が支配し、日本は米軍に許されたほんのわずかな空域を利用させてもらっているだけなのです。
日本はアメリカにとって占領した地域であり、かつてはソ連に対する、そして近年は中国やロシアに対する重要な前線基地なのです。それは韓国も同様でしょう。
アメリカ本土を無傷で守るためには遠く離れた日本や韓国は、絶好の前線基地になるのです。日本や韓国は焦土となってもアメリカ本土は無事で済みます。
しかし日本ほど卑屈な国はないかもしれません。
ドイツは日本と同じ敗戦国ですが立派な独立国です。日本のようにアメリカ軍が我が物顔に振る舞うことを許していません。ドイツの憲法法律が最高法規です。アメリカにボロボロにされたイラクでさえアメリカ軍を追い出しました。フィリピンもそうですね。ベトナム戦争はベトナムからアメリカを追い出して独立を勝ち取るための戦争であったとも言えます。
アメリカとの密約も含めた条約の運用は「日米合同委員会」で行われており、在日米軍のトップが外務省北米局長をトップとする各省庁からなる官僚グループをコントロールしています。実質的にはここが日本の行政のトップです。言ってみれば、国民の代表として選ばれた国会議員や内閣は、お飾りとも言うべき存在なのではないでしょうか?
日本の官僚が忠誠を誓っているのは日本の首相や内閣にではありません。
現にアメリカの意向に背き、沖縄から基地を外部に移そうとした鳩山政権は、官僚たちの裏切りで崩壊させられました。その他アメリカの日本支配にとって好ましくない多数の人々が、罪を着せられたり、あらぬ噂を広められたりして個人破壊され抹殺されています。
ここまで来ると今まで日本で起きていた不思議なこと、現に進行している不可解なことの多くがはっきりとつながってきますよね。
知れば知るほど悲しくなります。
「ジラード事件」を知っていますか?
1957年に米兵が遊び半分で日本人主婦を射殺した事件で、日本の官僚が動き、検察と裁判所に指示して結局は執行猶予になり無事にアメリカへ帰国させたという驚くべき結末になりました。明らかな殺人犯も米兵であれば日本では実質無罪になるのです。
どうでしょう?
日本は法治国家ですか?
日本は民主主義国家ですか?
日本は独立国ですか?
まだまだ本書に書かれていることは盛りだくさんなのですが、ちょっと疲れてきたので今回はここまでにしておきます。