堤 未果「政府は必ず嘘をつく」

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もの凄いタイトルです。思わず「ギョッ!」としてしまいますよね。
でも読んでみると分かりますが、常日頃感じていたことが、自分だけではなく、多くの人たちも同じように感じていたのだと納得できるのです。
本当のジャーナリズムってこういうものなのでしょうね。
権威や権力の矛盾を厳しく問う姿勢がない大手マスコミは単なる広報機関に過ぎないということがよく分かります。
とにかく日本ではほとんど伝えられてこなかった重要な情報があまりにも多いのに驚かされます。
日本国民だけではないでしょうが、民衆の多くが大手マスコミの情報だけを思考停止状態で鵜呑みにしていることの恐ろしさがひしひしと伝わってきます。
IAEAが原発推進団体であることは知っていて、福島の事故現場を視察したりコメントするのを下手な茶番劇を演じるものだと半ば呆れてみていましたが、WHOまでが一味だとは知りませんでした。道理で放射線被曝の影響はほとんどないなどととんでもない発言をするはずです。WHOにもグローバル企業から莫大な資金が流れているようですね。国連自体もマネーで支配されている感じがします。
今の世の中は国家をマネーが支配しているのではないでしょうか?もっともグローバル企業には国家の概念はなく、国家は単なる一市場に過ぎないのだとは思いますが。
日本を見てもある程度は分かります。小泉政権が強力に打ち出した規制緩和は、大企業、グローバル企業に計り知れない恩恵を与えるものでした。大企業は莫大な利益を得ることができるようになったのです。しかし一般の国民にはその利益は還元されるどころか非正規雇用の急増によって大量の貧困層を生み出し、アメリカの後を追うように富の二極分化が急速に拡大したのでした。世界でも有数の分厚い中間層は瞬く間に崩壊消滅してしまいました。富が公平に分配されていた時代は失われ、弱肉強食の市場原理が支配する殺伐とした世の中が出現したのです。
「景気」という言葉がずいぶん前から日本国民の主要な関心事になっていると思いますし、NHKをはじめ、多くの大手マスコミもずっとこの言葉を連呼しているように思います。
世の中はまさに「経済」一色に塗り潰され、全ての判断基準がこの「経済」に置かれていると言っても過言ではないでしょう。
「経済」を損なうものは全て悪、「経済」に資するものは全て善という単純化が進行しているように思います。現に国民が政権に期待する最大の関心事は常に「景気」です。「景気」さえ良くなれば他はどうでも良いという風潮が蔓延しているように思います。
その証拠に、あれほど恐ろしい原発事故を起こし、現在も事故は収束していないというのに、原発がなければ「経済」が成り行かないと言われると、何も疑うことなく「経済」のために原発に賛成する国民が多数存在する事実があります。
しかしよく考えてみて下さい。現在のシステムでは景気が良くなった分は一部の金持ちだけに反映され、一般の民衆はむしろ貧しくなるのです。国の重要な機能である富の再分配システムが、自民党政権下でどんどんと縮小されて機能しなくなっているのです。
アメリカや自民党がしゃかりきになって進めている規制緩和による景気刺激策はグローバル企業や大企業に富を集中させるものであり、一般民衆にはその富が再分配されるどころか労働条件の悪化などによってむしろ富を収奪されるシステムであることに気付くべきです。
1995年に内橋克人さんらが「規制緩和という悪夢」で正確に予見した通りの結果になっていることをしっかりと心に留めるべきです。
アメリカの現状を知れば日本の近未来の姿がよく分かるでしょう。
1%の富裕層と99%の貧困層。
日本が目指している理想郷アメリカはそんな国なのです。
同じ著者の堤 未果さんが書いた「ルポ 貧困大国アメリカ」などを読めばよく分かることでしょう。
それにしても今日本がどんな方向に向かっているのか、国民は理解しているのでしょうか?
小泉自民党の時もそうでしたが、熱狂的に自分たちが貧しくなることを支持していたのですから心配になってしまいます。
本書でも紹介されていますが、ヒトラーの
「大衆は理性ではなく、感情によって物事を決める」
は、まさに至言でしょう。
だから民衆は簡単に誤った選択を繰り返すのでしょう。
正しい正確な論理的説明は民衆には無意味なのです。
「テロとの戦い」
「チェンジ」
「郵政民営化」
「行政改革」
etc.
ワンフレーズ・スローガンで民衆は動くのです。
だから簡単に戦争を支持したりするのです。
とにかく本書を読むことによって世の中の見方が変わると思いますよ。