昨今の日本の変化に、とても心配していたことがとうとう起こってしまいました。
後藤健二さん、湯川遥菜さん二人の日本人が「イスラム国」に殺害されました。全く言い訳のできない極悪非道な蛮行です。強い憤りを覚えるのは大多数の正常な人間の反応だと思います。
特に後藤さんがしていたことは、アメリカのように人を殺したり苦しめたりすることではなく、その全く逆の、虐げられ苦しんでいる人々への優しい慈愛に満ちた救済活動でした。今回の事件は天使と悪魔とも喩えられるべき対極にある行動です。
このような恐るべき事件に対して、判を押したようにテロとの戦いと安易に叫び、武力を前面に押し出すのが欧米流です。それに便乗して、自衛隊を海外に派兵できるような法改正をしてしまおうとしているのが安倍政権。何ヶ月も前から人質事件を把握しながらほとんど何もすることなく、国民の命よりアメリカなどへの配慮を優先させた彼らは、こともあろうに今回の悲劇を自説を実現するために利用しようとしています。
「イスラム国」に勝るとも劣らない卑劣な行為だと思います。武力を前面に出せば相手も必ず武力で対抗するでしょう。それでは永遠に争いは終結しません。アメリカのテロ戦が良い例です。先人が戦争という大変な犠牲とその反省によって作り上げてきた、世界でも希有の平和国家というイメージは、安倍政権によって一瞬で破壊されてしまいました。日本は今内部に大変な危機を抱えていることに全ての国民が気付くべきです。
心から尊敬している一人、古賀茂明さんの言葉
「今度の人質事件では、いろいろな報道がされていました。でも、必ず最後の方は「テロは許しがたい行為だ」「いまは一致団結して、安倍さんの戦いを支持すべきだ」というところに帰結してしまうんですね。そうなると、あらゆる議論が封じ込まれてしまう。今は戦前のように治安維持法もないし、特高警察もいませんが、安倍政権のテロとの戦いに異論を挟むのは非国民だ、みたいな雰囲気が醸成されつつある。テロリストを擁護する気は毛頭ありませんが、日本が米国と一緒になって世界中で戦争に参加する国だというイメージをつくっていいのか。多くの人が違うと思っているのに、誰も声を出せない。それってやっぱり、おかしいでしょう。」
そもそも何故「イスラム国」のような組織が生まれたのでしょうか?
かつてアメリカのブッシュがイラクに対して強引に戦争を仕掛け、それによって中東の秩序、均衡が破壊されて不安定化し、フセインの残党が生き延びて過激化先鋭化して「イスラム国」を組織したと言われています。
破壊と混乱は貧困や飢えを招き、多くの不満を醸成します。ましてやアメリカなどは、全く罪のない市民や子供、老人、女性などを多数殺戮しています。ここに憎悪が生まれないはずがありません。
世界に目を向ければ、グローバリズムが世界を覆い、弱肉強食の論理に取り残された弱者の中に過激な怒りが生まれるのは想像に難くありません。グローバリズムとは、現代の植民地戦争です。武力ではなく金の力で弱小国家や弱者を侵略します。格差は限りなく拡大し、多くの貧困と憎しみを生み出しました。
テロはその結果に過ぎません。
テロをアメリカのように単なる武力で押さえ込もうとするのはとんでもない勘違いだと思います。アメリカは経済政策をこそ改めるべきなのです。格差をなくすための政策に転換すべきなのです。また、貿易の自由化を弱小国に強要すべきではありません。各国にはその国独自の特性があり、独自の発展パターンがあります。グローバリズムを押しつけて、アメリカや先進各国の都合の良いルールに従わせることは止めるべきです。
最近日本もアメリカを模範としてそれに習おうとする傾向が顕著です。そのためあれほど豊かだった中間層が消滅し、貧困層が激増しつつあります。格差が拡大しているのです。強者に優しく弱者に厳しい政策が次々と実施されています。優しいのか無知なのかは分かりませんが、被害者であるはずの多くの貧困層は選挙でも投票にも行かず結果として自分たちを苦しめている政策を支持しています。従ってこれからも格差は拡大し続けることでしょう。要するに日本でもテロが生まれる土壌が形成されつつあるのです。
貧困に苦しんでいる多くの人々が声を上げない限り、状況は益々悪くなっていくでしょう。日本人は大人しく我慢強いとはよく言われますが、我慢もほどほどにしないと取り返しのつかないことになってしまうでしょう。