いつの世も人間の心理というものは変わらないもので、権力者は民衆の心理をコントロールすることによって自らの権力の維持に腐心してきました。
その中で民衆の心を捉えるのに非常に有効な方法が一つあります。特に独裁的な政権が好んで用いる方法ですが、民衆の敵を作り出しそれを徹底的に攻撃して見せるのです。
ヒトラーはユダヤ人を敵とみなして徹底的に虐待しました。
プーチンはチェチェン系テロリストをとことん利用して対テロ戦争を先導して国民の熱狂的な支持を取り付けました。
ブッシュは9.11を利用して悪の枢軸国の一つとしてイラクを名指しし、国民感情を煽って空前の支持率を獲得し、後に多くの国から非難されることになる架空の大量破壊兵器所有疑惑でイラク戦争を始めて多くの犠牲者を出し、後のISを誕生させテロ戦争を泥沼化させるという愚挙に出ました。人が死ぬほどに兵器が売れてアメリカの軍需産業はホクホクだったことでしょう。
トランプは不法移民を徹底的に排除したり排外主義をアピールすることによって熱烈な支持基盤を獲得しました。
そして我が国の安倍首相は、当初は北朝鮮を徹底的に敵とみなし、ミサイル実験や核実験を利用してJアラートを乱発して国民の危機意識を煽り、メディアを利用して国民にそれを徹底的に浸透させることによって数々の失政から国民の目をそらさせることに成功して長期政権を維持してきました。
数え切れないほどの失政を続けている安倍政権なので支持率を維持するのは大変なことで、支持率低下の歯止めの切り札になっていた北朝鮮が、最近になってにわかにアメリカと接近する事態になって驚き慌てて、急遽新たな敵として韓国に照準を合わせ、メディアも使って大々的に嫌韓を煽るキャンペーンを続けているのです。
NHK内部ではKアラートが鳴り響いているようですが、国民に向けてJアラートを鳴らすことができません。参議院選も近づいているし、安倍政権にとっては非常事態なのです。
そもそも喧嘩を仕掛けたのは安倍政権で、レーダー照射問題は政権の指示によって外交問題化されたのです。チャンスと捉えたのでしょうね。チンピラが肩に触れたと因縁をつけるようなものです。事務レベルで片がつくような問題をわざわざ外交問題にまでしたのにはそれなりの理由があったというわけです。
その後様々な嫌がらせを続け、最近輸出規制にまで発展しました。これは安倍政権にとっては良いのでしょうが日本にとっては大変な痛手です。資源もない島国の日本は貿易で成り立っており、世界中の国々と友好な関係を築く必要があります。米中貿易戦争でただでさえ輸出が減少を続けている現在、自分で輸出を減らす愚挙に出た愚かさはまさに安倍政権を象徴しています。
まあ国や国民のことなどもともと考えていない政権ですから、自分さえ生き残れば良いという考えなのでしょう。
しかし安倍政権のこの方法はセオリー通り一定の成果を挙げているようですね。
この韓国に対する政策だけで安倍政権を支持するという人々が増加しているようですから。非常に残念なことに民衆というものはこんなあからさまな煽りにも簡単に乗せられてしまうのです。民衆の多くは木を見て森を見ません。
目先のことで簡単に重要な判断をしてしまうのです。
だから忌まわしい戦争でさえも、多くの場合国民の熱狂的な支持のもと遂行されるのです。ホモ・サピエンスなどと気取っていますが、所詮は本能に支配された野蛮な存在なのです。人間って本当に中途半端で危険で愚かな生き物ですね。
手前勝手な自分に都合の良い解釈をしたがるのも偏狭な心を持つ民衆の特徴です。日本人は島国根性と言われるように特にその傾向が顕著なのかもしれません。近隣諸国が受けた被害を客観的に受け止め、相手の立場に立って考えられる国でなければ国際社会で生きていくのは難しいでしょう。一度こんな記事を参考に外側の視点から日本を見る訓練をした方がいいと思います。そして内田樹さんのこの記事も日本と海外の見方のズレや日本は韓国のような独立した主権国家ではない現実について知る参考になるでしょう。
今回の日韓の貿易戦争については国内報道ばかり見ていると太平洋戦争に突入した時と同じ状況になりますよ。海外ではこんな風に見られていることをきちんと知るべきです。同じ過ちを犯さないためにも。