ポピュリズム

以前ちょっと紹介した本ですが、読み終わりました。
並行して色々とつまみ食いをしているので読み終わるのが遅くなってしまう本もあります。でもこの本は読み始めるとどんどん読めます。それだけ分かりやすいということでしょう。

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2016年のドゥテルテ大統領、トランプ大統領の誕生、イギリスのEU離脱と、世界が何か違う方向に動き出したと思わせることが立て続けに起こった年でした。
民衆の不満を利用してそれを煽り、巧みに自分への支持に取り込むポピュリストたち。
今世界は民主主義の下で、世界各地で、かつてのヒトラーが出現した時と似たような状況に陥りつつあるように見えます。

ポピュリストたちに共通しているのは、世の中に敵を作り出すこと、その敵を徹底的に攻撃することによって民衆の不満のはけ口を作り出すことです。その手法は非常に単純で、ほんの一部の問題点らしきものだけを針小棒大に非難し続けるだけです。その問題点らしきものは実は間違いであっても全く意に解せず、事実は全く無視して非難し続けるのです。その矛盾を指摘し正そうとする知識人は絶好の攻撃対象になり、これまた全くデタラメな理由で攻撃を始めます。

民衆は脳みそではなく感情で動くことを熟知したポピュリストたちは、民衆の感情に訴える狡猾な方法を身につけています。
普通に考えればすぐにデタラメだと分かることも、煽られた民衆には全く見抜けません。この時にはもはやホモ・サピエンスではなくなっているのかもしれません。
日本でもよく見られる光景ですよね。
タレントの人気投票でもしているのかと思えるような選挙。
真面目な政策を訴えても意味がないように見えます。逆に真面目であればあるほど大衆は離れていく。
扇動的な短いフレーズだけで大騒ぎする聴衆。それを煽るかのようなメディア。
民主主義って本当に危うい制度だと思います。

むしろ民主主義はポピュリストにとっては非常にありがたい制度なのかもしれません。
どんな手段であろうと絶対多数を獲得できれば、政治経済的にしっかりした構想を全く持ち合わせていなくても、ヒトラーがしたように後はどうにでもできるのですから。
公約なんてないのも同じ。公約を守らなくても国民は全くフォローしていませんから。せいぜい選挙の時に耳に心地よいことを並べ立てておけばOK!
安倍政権がことあるごとに民主党政権時代を批判してきたことを知っているでしょう?
これもデマゴーグ型ポピュリストの典型例です。
民衆の不満のはけ口に駄目な民主党政権時代を捏造したのです。それによって自らの失政を覆い隠し、政権維持に活用してきたのです。実際は民主党政権時代の方が国民は豊かだったのにメディアも含めてそれを隠蔽したのです。
安倍政権で喧伝されたアベノミクスは全く中身のない見せかけのものであったことが明らかになっています。むしろ日本経済を危機的状況に追い込んだ可能性が近年指摘されています。もはや手遅れかもしれません。日本国民はかなりひどい経験をすることになるかもしれません。

この本で盛んに言われている「熟議なき多数決」はまさに今の日本の状況そのものです。
野党はもちろん、国民の大多数が反対している問題法案を数に任せて次々と強行採決している安倍政権は、ポピュリスト型政権の典型であり、なんの政治的経済的考えを持たない空っぽの政権なのです。ただ政権、権力の維持に必要なことだけを数の力に頼って強引に決定して行くだけなのです。そこには当然熟議など存在しようがありません。熟議をしたらそれこそ山のような問題が明らかになるだけなのですから。
安倍首相が国会での議論をとことん嫌うのは中身が何もないことが判明してしまうからです。党首討論もとことん時間を短縮させ、しかも質問されたことに答えず関係ないことを延々と喋りまくって時間を浪費させたのもそのためです。今は総裁選の石破氏との公開討論から逃げまくっています。安倍首相の中身が何もないことが知られてしまうからでしょう。

それから忘れてはいけない重要なことは、国民投票がポピュリストにとって最高の味方になるということです。
国民投票では嘘であろうが何であろうが民衆の感情に訴えかけ、一種のフィーバーを作り出せれば勝ちです。これはポピュリストの最も得意とするところ。深い議論など彼らにとっては邪魔なだけで、ポピュリストの望む雰囲気を創り出せれば良いのです。これはメディアを総動員すればいとも簡単に実現できるでしょう。実はヒトラーもこれを使って独裁制を確立したのです。日本の典型的なポピュリスト政治家である橋下氏が大阪都構想を住民投票で問い、僅かな差で失敗したのはつい最近の出来事です。メディアを自由に操れる現政権だったら成功していたでしょうね。

現政権下では議論の場であるはずの国会でさえもほとんどまともな議論が行われずに次々と問題のある法案が強行採決で成立してしまっています。ましてや深い知識も正確な情報も持ち合わせない一般の国民に直接賛否を問う国民投票を実施したらどんな結果が待ち受けているかは想像に難くありません。それにメディアを支配下に置いた現政権が圧倒的な宣伝力で世論を一挙に改憲に向かわせるのは容易いことです。そして今、最も重要な憲法の改正をろくな議論もなしに国民投票にかけようとしているのです。

一人一人は非力でか弱い国民を、強大な、そしてある時には凶暴な国家権力から守る唯一の砦でもある現憲法を、国民一人一人が十分理解した上で深い議論を重ねて変更するのではなく、なんとなく雰囲気で、言われるがままの勢いで変えてしまおうとしているのが現在の改憲情勢なのです。

自民党の改憲勢力が基本的人権をなくそうとしていることは国民の大部分に知られていません。その他多くの現政権にとって不都合な真実同様、メディアが封印しているからです。国民が国の暴力から守られているのもこの基本的人権があるからです。これがなくなったら国に逆らったものはすべて排除されるでしょう。それは戦前、戦中で現実に起こったことです。あれほどの犠牲を出したにも拘わらず日本はまた戦前に戻ろうとしているのです。

今日本は、こんなとんでもない状況にあることをどれだけの国民が認識しているのでしょうか?
先の大戦の時のように日本が滅亡寸前になるまで気が付かないのでしょうか?

追記
ケンタのその後、ものすごく元気です!
ママがケンタの腰のモミモミを止めてからは以前にも増して元気で、少し涼しくなったとはいえ夏の散歩ではありえないほどたくさん散歩をしています。
でも最近なかなかお友達に会えないのでちょっと寂しいかも。