• 投稿者:
  • 投稿カテゴリー:読書

最近はメディア、特に大手のメディアの報道にいささかうんざりしかけていた。
あまりにも当たり障りのないことばかりが報道される。特に妻の意向でずっと朝日新聞を購読しているのだが、ここ何年もスクープらしきものがなくピリッとしない紙面が続いている。
私としてはむしろ東京新聞の方が好みなのだが、新聞大好き人間の妻の意向を無視するわけにはいかない。
そんな時にふとある本が目に入った。
講談社から発売された「朝日新聞政治部」だ。
鮫島浩さんという朝日新聞社の内部の人間による、いわば内部告発だ。

そこには実に生々しい報道現場の実態が、著者目線で、しかし私にはかなり客観的冷静に描かれているように思われる。会社経営とあくまでも真相を追い続ける報道現場との相剋が鮮烈だ。

そして結論から言えば、大企業になればなるほど守りに傾く。それは当然の成り行きとも言える。多くの社員を支えていかなければならないという最優先の責任があるからだ。しかしその守り方にも正しい筋道がある。一部の誤りのダメージを恐れるあまり、事実を曲げてまでも保身を優先することは、特に報道機関の場合には、もはや存在理由自体を自ら否定したことになる自殺行為だ。誤りは誤りとして謙虚に反省、謝罪、修正し、一方事実は事実として正確に報道する。
以上の基本的な姿勢が維持できなければ、現場で情熱を持って真実の追求を続けている記者たちのモチベーションを維持することは不可能だ。一部の誤りで多くの掘り起こした真実が無効化されてしまったら、底知れない徒労感を味わうだろう。

「吉田調書問題」ではこれが起こったのである。

私はこんなことが朝日新聞内部で進行していたことなどついぞ知らなかった。その異変は私が感じていた朝日新聞の記事の変化に現れていたのだ。
スクープが出ない、何か遠慮がちな記事内容、当たり障りのない記事の増加等々、朝日新聞は大きく変わってしまった。もう元には戻らないかも知れず、近年のインターネットの普及もあってやがて消えていく運命なのかもしれない。

著者の鮫島さんはそんな朝日新聞を退社した。彼のような真性の新聞記者にはとても生きていけない環境になってしまっては無理もない。しかし勿体無い限りである。
でも彼の情熱は消えていないようだ。個人でサイトを立ち上げ積極的に記事を投稿し出している。読んでみれば分かるように、大手メディアにはない、実に鋭い切り口で忖度なく様々な出来事に切り込んでいる。私にも大変参考になっており朝日新聞の記事よりよく読んでいるかもしれない。
みなさんにも是非彼を応援する意味でもサイトを訪れて欲しい。サイトは以下である。

SAMEJIMA TIMES