いい年をして今更ゲームでもないのだが、ここ何年かMacでゲームにチャレンジしている。

Windows PCであればゲーム環境を作るのはそれほど難しくはない。PC上で動作するゲームのほとんどがWindows用なのだ。PCゲームのクリエイターたちは、市場規模の大きなWindows PC用のゲームに投資した方がはるかにリターンが大きいから当然の結果だ。そして現に私が所有する大昔の自作Windows PCでも大抵のゲームは全く不満がない状態で動作する。グラフィックボードさえそれなりのものを揃えれば、CPUが多少非力なものでも問題ない。

でもそれでは面白くない。私が常用しているPCはMacなのだ。自作までしていたWindows PCの世界から決別して久しい。今更Windowsの世界に戻る気はしない。世の大勢に逆らうのが私の悪い性格。天邪鬼なのだ。

そこで何とかMacでPCゲームをできないものかと悪足掻きを続けてきた。
その中で最大のネックはMac用のPCゲームが決定的に少ないということだ。メジャーなゲームのほとんどがWindowsにしか対応していない。そもそもMacOSがゲームを軽視して作られてきたのだから当然だ。
こういう状況の中でMacでPCゲームをするためには以下の方法しかない。

1. BootCampを使う
2. Parallels Desktop、Cross Over等の仮想化ソフト
3. Geforce NOWに登録する

1のBootCampは、WindowsそのものをMacのハードウエアで実行するようなもので、動作速度は最も速い。しかし、MacOSとの切り替えには再起動が必要となり、連続性が保てないため非常に面倒な運用になる。しかもIntel CPUのMacであれば使えるが、M1などのApple Siliconには対応していない。
3のGeforce NOWは、インターネット上の巨大高速サーバーからのストリーミングを利用するので、回線速度さえ高速であればクライアント側のハードウエア環境に左右されず、高負荷の最新ゲームでも軽快な操作が可能となる。無料のプランも存在するが、利用時間が連続で1時間以内、利用できるゲームタイトルも非常に少ない。有料(月額1,980円)の場合でもどんなゲームでもできるわけではなく1,000タイトル程度である。また連続利用時間は6時間以内である。一時的に少し遊ぶ程度であれば良い選択肢かもしれない。
私にとって最も魅力的だったのが2の仮想化ソフトを利用する方法である。ゲームをする上で最も実行速度が速いのがCrossOverだった。しかしこのソフトは個々のゲームソフトとのマッチングがシビアで、まともに動作するゲームソフトはそれほど多くはない。一般向けとはとても言えないだろう。
一番完成度が高く安定して使用できるのがParallels Desktopだ。
Windowsのライセンス購入が必要というハードルはあるものの、ゲームも含んだ大抵のWindowsアプリケーションが問題なく動作する。しかもMacOS環境とシームレスにつながって非常に効率的だ。

私の現在のMacのメインマシーンは今年の春に発売されたMac Studioである。中国でのロックダウンが心配だったので予約が可能になってからすぐに発注した。3月9日に予約して我が家に到着したのが3月26日。ずいぶん早く入手できた方だ。
スペックは以下の通り。

10コアCPU、32コアGPU、16コアNeural Engine搭載 Apple M1 Max
32GBユニファイドメモリ
1TB SSD
前面:USB-C ポート × 2、SDXCカードスロット × 1
背面:Thunderbolt 4 ポート × 4、USB-A ポート × 2、HDMI ポート × 1、10Gb Ethernet ポート × 1、3.5mm ヘッドフォンジャック × 1

これで293,800円だ。結構いいお値段ではある。構成としてはエントリーモデルに近いが、この上のM1 Ultraとなると急に50万円以上になってしまう。とても一般人には手が出せない。
しかし今回私が入手したMac Studioは、エントリーモデルとは言っても従来のIntel Macとは段違いの性能向上をしている。特にゲームに対応させるために、M1 MaxとしてはGPUコアを上限まで増やした仕様になっている。

この仕様のMac StudioにParallels DesktopをインストールしてMacでのゲーム環境を構築しようとしているのだ。

Parallels Desktopをインストールするにあたってどこにインストールするかでちょっと悩んだ。そのまま本体の1TBのSSDにインストールすれば超高速にアクセスできるので最も望ましいのだが、本体のシステムSSDとも呼ぶべき貴重な領域をできるだけ温存したいと考え、外付けのSSDを用意してそこにインストールすることに決めた。
現在、外付けのSSDで、Mac内蔵のSSDに匹敵する高速のものは存在しない。そこでできるだけ安価で大容量高速な外付けSSDを目指してインターネットを探し回った。

しかし出来合いの高速大容量の外付けSSDはThunderbolt 3接続の2TBのものでは、6.2万円から8万円以上と非常に高価である。これではとても入手できない。
そこで方針転換して、Thunderbolt 3接続の外付けSSDケースと2TBのSSDを組み合わせて自分で組み立てることにした。これであれば相当にコストダウンが可能である。

粗悪品が多いのでいつもはAmazonをできるだけ利用しないようにしているのだが、PC関連では安価だし豊富な種類を揃えているので選別眼がありさえすれば非常に便利に利用できる。今回は全てAmazonで調達した。

まずは外付けケースを選んだ。
Yottamaster M.2 SSD 外付けケース USB4.0 NVMe M.2 SSDケース
購入時は4,000円引きのクーポンが付いており、15,990円で購入できた。

これに組み合わせるSSDには、様子見ということもあってそれほど性能が高くなく安価な、しかし容量は2TBのものを選んだ。
東芝エルイートレーディング(TLET) 内蔵SSD 2TB PCle Gen3x4 M.2 2280


組み立ては実に簡単だ。SSDをソケットに嵌め込み、付属のネジで固定し、熱伝導シートとヒートシンクを貼り付けるだけだ。
これで合計34,790円。出来合いの外付けSSDよりもはるかに安価に仕上げることができる。

それでは性能は?ということでアクセススピードを計測してみた。


流石に内蔵のSSDには遠く及ばないものの、今までせいぜい400MB/s程度だったものが、1,500MB/s前後と4倍速くなっている。これでもう相当満足だ。
しかしもう少し頑張ってみようと、妙な欲が出てもうワンセット手作りの外付けSSDを組んでみた。
それがこれ。
玄人志向 ドライブケース M.2 NVMe SSD 2280 Type-C 40Gbps
SUNEAST 2TB NVMe SSD PCIee Gen 3.0 ×4 M.2 Type 2280

私が購入した時はドライブケースが17,640円、SSDが16,500円で10%のポイント付きだった。ポイント抜きでも合計34,140円だ。
前に組み上げたものと同程度か少し安いくらいだ。しかも性能までアップしていた。


読み書き共に2,000MB/sオーバー、読み込みに至っては3,000MB/sに迫る。

今回組み上げた二つの外付けケース間で800GB程度のファイルのコピーをしてみたが、冬で室温も20℃程度と比較的低いために、いずれのケースもほんのりと暖かくなる程度だった。真夏であっても冷却ファンを使えば全く問題なさそうだ。

こうして内蔵のSSDにゲーム環境をインストールするのではなく、外付けSSDに逃すという本来の目的の準備が整った。

私のMac StudioのmacOSは現在最新のVentura 13.1である。Windows環境を作るための仮想化ソフトParallels Desktopのバージョンも最新の18.1.1である。そしてこのParallels Desktopを玄人志向 ドライブケースとSUNEAST 2TB NVMe SSDからなる外付けSSDにインストールしてある。Windows 11のサスペンド状態からの立ち上がりが、以前400MB/s程度の外部SSDにインストールしてあったときに比べて格段に速くなり、数秒で立ち上がる。
また現在Conanというオープンワールド・サバイバル系のゲームをシングルプレイで始めたが結構スムーズに動作する。
特に最新のアクションゲームでない限りは十分実用的なのではないだろうか?

本当はApple SiliconネイティブのmacOSに対応したゲームタイトルが登場してくれれば相当高度なゲーム体験ができると思われるのだが残念だ。
現に、7 Days to Dieというかなり重いゲームでも、Rosseta 2で動作させてでさえ私のMac Studioでは軽快に動作する。Apple Siliconのゲームでの潜在能力を垣間見せてくれる事実だ。

しかし7 Days to Dieはゲームコントローラーをフルサポートしているのだが、Windowsでは正常に動作するのに現在の最新バージョンであるmacOS Ventura 13.1では非常におかしな挙動をして全く使えない。SteamクライアントがmacOS Venturaに対応していないのか、本質的にmacOS Venturaがまだまだゲームコントローラーに完全には対応していないのかは分からないが、こんな状況ではMacでWindowsのように気持ちよくゲームを楽しむことはまだまだ先の話なのだろう。
関係者の奮起に期待したい。