日本の名ばかり民主主義の崩壊


起こるべくして起こったということでしょう。
小泉政権から急速に進んだ日本の政治の劣化。これを支えたのが人民主権、民主主義を全く理解していない大多数の国民でした。選挙がまるでタレントの人気投票のように思われたのもこのころでした。

一時正気に帰り民主党政権時代が到来しましたが、リーマンショックで痛めつけられた経済が回復するいとまもなく、今度は未曾有の東日本大震災に加えて世界最悪の原発事故に見舞われ民主党政権はその対応に追われました。その時野党だった自民党の非協力的な対応の酷さに怒りを感じたことを覚えています。

そして今、安倍首相が事あるごとに言及する「悪夢のような民主党政権」には正直、怒髪天を衝く思いです。安倍首相が2006年に国会答弁で「全電源崩壊はあり得ない」と言ったことにより福島第一原発の対策はされずに重大な原発事故に至ったことを棚に上げて民主党政権に全てなすりつけ、なんの反省もなく相変わらず原発を推進する姿勢はまさに悪魔の仕業としか思えません。

そして様々な不運に見舞われた民主党政権時代と比べて自らのアベノミクスが大成功したと偽って国民を欺く姿勢はとても一国を統べる首相のすることではありません。

様々な統計データの操作によってGDPや給与水準がかさ上げされたり民主党政権時代やそれ以前のデータが低くなるような操作をされたりしていたことが明るみに出ています。
安倍政権下の経済が、まさに富裕層のための政策であったことも明らかになっており、先日の国会の党首討論でも共産党が提案した富裕層からの増税を馬鹿な政策と言い放ったことからも首相自らがそれを認めたということです。

消費税というのは以前から言われているように富裕層に優しく貧困層に冷たい政策です。日々三度の食事にありつくことも困難な人からも容赦なく税金を取り立てているのです。一方の富裕層の所得税はほとんどの収入が株式などの配当なので上限は20%程度。給与所得だけのサラリーマンとさほど変わりません。この国はいつの間にか富裕層にとって天国のような国になりました。

その一方で非正規労働者が急増し労働者の賃金の低下が止まりません。恐るべきことにアベノミクス下で実質賃金はあの悪夢のような民主党政権時代よりもはるかに低下しさらに低下を続けているのです。雇用が増えたと自慢げに語る安倍首相ですが、増えたのは結婚も子育てもできないような低賃金の非正規労働者なのです。少子化に拍車がかかるのも当然です。

悪夢のような民主党政権と違って7年間も天国のような安倍政権を続けているのですから日本がここまで劣悪な環境になるのは当然と言えば当然のことです。ここまで行ってしまうとどんなに優秀な政権が現れても回復には相当な年月が必要でしょう。壊すのは簡単、作り上げるのは大変なのです。我が愛すべき国民は待つことができずまた騙されて逆戻りをしてしまうことでしょうね。要するにもうこの没落からは抜け出せず、本来の日本国民にあったレベルまで落ちる以外に道はないかもしれません。

たまたま朝鮮戦争やベトナム戦争特需で大金持ちになった日本は、その有り余る資金を将来に投資することなく、バブル経済やその他の浪費で台無しにし、アジアの一等国と自慢していたのも束の間のこと、今や没落の一途を辿っています。成金の末路とはこんなものなのでしょうね。

日本の没落を顕著に物語るものがメディアの劣化です。
今や全メディアが限りなく戦前戦中の国営放送に近づき大本営発表を報じ始めています。NHKはもうだいぶ前から完全に国営放送化しています。政治関連ニュースは戦中の大本営発表と本質的な違いはないまでになっています。
民放は現場を中心に懸命に抵抗してきましたが、民放トップが政権に籠絡され、徐々に国営放送化しつつあります。

テレビ朝日の報道ステーションへの介入は有名な話で、メインキャスターの古舘伊知郎氏が降板させられ大人しいテレビ朝日社員の富川悠太氏に交代しました。そして決定的なのがチーフプロデューサーの交代です。親安倍政権で有名な桐永洋氏に代わりました。それ以来報道ステーションはすっかり生まれ変わり、政治問題、特に安倍政権で問題になっている案件を取り上げることが極端に減りました。その一方で以前様々な賞を受賞しているかつての報道ステーションのチーフプロデューサーだった敏腕女性経済部長がひっそりと左遷されています。さらに極端な安倍政権擁護でネトウヨとしても有名な小松靖アナウンサーが「ワイド・スクランブル」のメインキャスターに抜擢されています。安倍政権と仲良しのテレビ朝日早河会長の面目躍如といったところでしょう。
こうしてテレビ朝日の国営化は着々と進行しています。

TBSも負けてはいられません。
まともな報道番組、「news23」と「サタデージャーナル」はなるべく見られないような時間帯、深夜と早朝に設定されていますが本日を最後に「サタデージャーナル」は突然放送終了になりました。
政権に批判的な正しい報道をしてくれる貴重な番組だったわけですが、政権には相当に目障りだったのでしょう。またまたテレビを見る理由がなくなりました。作り上げられたフェイクニュースに溢れたテレビを貴重な時間を使って見るほど馬鹿げたことはありませんからね。
「サタデージャーナル」の編集長、上田晋也氏の最後の立派なコメントが残されました。心に残ります。

「子どもたちに『いい時代に生まれてきたね』と言える世の中をつくる使命がある。私は当たり前のことを言ってきたつもりだが、その当たり前を言いづらい世になりつつあるのではないか。世の中を変えるのは政治家ではなく、我々一人ひとりの意識だと思う」

テレビはどんどん真実を伝えなくなりつつあります。
そんな中でも真実を守り抜こうと奮闘している一握りの人たちが存在します。
海外では当たり前のことなのですが、意識の低い日本でこれほどの映画が登場するとは思いもよりませんでした。

昨日全国一斉に公開された映画「新聞記者」。フィクションでありながら現実に起こったことを鮮やかに思い出すほどにリアルに踏み込んだ渾身の力作です。
そして何よりも賞賛すべきは権力に屈しない気概です。大手のサラリーマン記者が決して持ち得ない真実追求への強烈な使命感がこの「新聞記者」に描かれています。
東京新聞の望月記者がモデルであることはすぐに分かります。権力に迎合した大手メディアの記者たち、特に記者クラブの、記者とは名ばかりの輩と峻別される真実追求への気概と使命感は爽快です。
逆に大手メディアの記事がいかに真実から程遠いかが分かることでしょう。政権から有り難く頂いた都合の良い情報を垂れ流すだけなのです。大手メディアの記事を鵜呑みにしてはいけないことを知らなければなりません。

今開催中のG20の報道もおぞましいですね。
安倍首相が議長国の首相であるのにも関わらず世界各国の首脳から全く相手にされていないことが集合写真の撮影前のビデオではっきりと分かります。
最初にひな壇の中央に立ち、各国首脳を迎える場面で安倍首相以外の各国首脳は互いに固い握手をしたり抱擁し合ったりしているのに、安倍首相に握手したのはオランダの首相だけ。孤立感が半端ではありませんでした。いかにNHKの安倍応援団長岩田記者が世界を結びつけているのは安倍首相だという夢物語を作り出しても現実は如何ともし難いのです。安倍政権になって日本の外交は完全に崩壊し、全ての外交問題が後退するとともに日本は世界から全く相手にされない重要ではない国に格下げされてしまいました。
以前紹介した国連での演説でも分かるように世界ではすでに周知の事実です。

最近北朝鮮に代わって敵国に仕立てようとマスコミを総動員して懸命に韓国を貶めようとしていますが、それをさらに印象付けようとG20で文在寅大統領と会談をしないという幼児のような馬鹿げた対応をしました。ところが実はその文在寅大統領は3回目の米朝首脳会談の影の立役者でした。孤立させようとしていた文在寅大統領が世界の外交で影の立役者になる一方で、我が国の首相は何も知らされず完全に蚊帳の外。孤立しているのは日本なのです。金正恩と直接向き合うという安倍首相の言葉が、彼の今まで発してきた言葉と同様いかに実のないいい加減な虚言であるかということが嫌という程分かったでしょう。日本国民もいい加減に気づかないと世界の笑い者になりますよ。

世界は熾烈な争いの場です。知力を振り絞った戦いが繰り広げられているのです。そこにあまりにも能力のない首脳が登場すればその国はどうなるかは火を見るより明らかでしょう。餌食になるだけです。現実に日本は、安倍政権になって以来、アメリカをはじめ多くの国から搾取され続けているのです。

このまま国民が気づかなければ先進的で高度な文化を持った独立国としての日本は滅び、アジアの片隅の未開の植民地として世界から忘れ去られるでしょう。