先日、尊敬する天野祐吉さんが亡くなりました。
朝日新聞のCM天気図や様々な発言に接し、その上品で茶目っ気たっぷりな中に、実に鋭い現代社会の悪への批判を散りばめた語り口に、いつも元気を頂いていたのでした。
もっともっと元気で長生きして欲しい、貴重な人でした。
特に今は、金儲けのための経済一色で、経済が本来何を目指すべきなのかを全く忘れてしまった大企業が、我が物顔で世界を動かし、人類どころか地球全体を破滅に導こうとしているご時世です。一人でも多くの、まともな心を持った発言力のある人が必要な時だと思うのです。
欧米は、特にアメリカは、政治がほぼ完全に大企業に支配されてしまいました。政策は全て大企業目線で決定されます。
今まで日本はかろうじて完全に大企業に支配されるまでには至っていませんが、現在の政権は、完全にアメリカ流の大企業目線になっています。
もう一般の国民は、いかに欺すかという対象以外の何者でもなくなりました。
経団連の上機嫌ぶりを見れば明らかでしょう。
大企業が規制緩和や様々な優遇を受けて莫大な利益を上げても、その恩恵は一般の国民にはもたらされません。大企業の正社員は多少の恩恵を受けるでしょうが、今や大多数を占める非正規労働者や中小企業は取り残されたままです。潤うのはお金持ちの投資家だけです。莫大な利益は言い換えれば非正規労働者や中小企業から搾取されたものともいえるのです。
政権がいかにももっともらしく喧伝している景気が良くなれば給料が上がって国民が潤うという論理は、まやかし以外の何ものでもないと思います。
経済活動の本来あるべき姿は、より多くの人々が豊かに幸福に暮らせる世界を作ることにあるはずです。大勢の人の犠牲の上に一部の人だけが富を独占するような世界は明らかに間違っています。
「いざなぎ超え」といわれた好景気の時、国民がどんどん貧しくなっていったことをみんな忘れてしまったのでしょうか?それなのに相も変わらぬ成長戦略だの景気対策だの、どれだけ国民を痛めつければ気が済むのでしょうか?そもそも有限の世界で永遠に右肩上がりの成長を求めるなんて、如何にも非現実的だとすぐに分かりそうなものですが。
何十年も前の日本がまだ発展途上国であった時代と変わらないアプローチしかできない現在の政権と官僚に唯々あきれるばかりです。
経済大国第一位のアメリカの国民はみんな幸せでしょうか?躍進著しい経済大国第二位の中国は?世界を席巻するサムソンを擁する韓国は?
今までの経済指標が如何に万人の幸福と結びついていないかが良く分かります。成熟した経済には新しい指標とシステムが必要なのです。優秀なはずの官僚たちには是非真剣に考えて欲しいものです。
本来はこのような状況を変える力を持っているサラリーマン層は、日本の場合、就職即企業との結婚という状態で、仕事以外のことに意識を集中できない状況です。
それは今までの投票行動を見ても明らかで、非常に皮相的、刹那的、衝動的で、深い理解や理念を持って重要な投票行動を行っていないことは明らかです。
もしかしたら会社から解き放たれた高齢者が、まともな意識を取り戻し、社会を正常な方向に導く大きな力になるのかもしれません。
高齢化社会が忌み嫌われていますが、ひょっとすると新しい時代の幕開けかもしれないと想像すると多少は元気づけられ、もう少し頑張ってみようかなと思ったりしています。