日本の将来は?

このところ「世界」「選択」などの雑誌に加えて、興味深い本をたくさん購入してしまったので全く時間がなくなってしまいました。
とりあえず最近読んだ本は、水野和夫「閉じていく帝国と逆説の21世紀経済」、萩上チキ「すべての新聞は「偏って」いる」、本間龍「電通巨大利権」、明石順平「アベノミクスによろしく」です。

2018021001.jpg

それぞれ私が以前から考えていたことと同じ見解が述べられていたりすることも多いのですが、一方でとても新鮮な知識や考え方を提供してくれてまた勉強になりました。メディアで流れる根拠薄弱な刹那的情報と違って、やはり本はいいですね。じっくり反芻して確かめられる。情報の確かさは引用がきちんと明確に示されているかで分かりますね。
最近色々なメディアで飛び交っている情報にはとんでもないフェイクが多数混入しているので国民は警戒しないといけないです。
今回の本の中では明石順平「アベノミクスによろしく」が非常に明快で国民の大部分が知らないであろう重要な事実を明らかにしている点で出色の本ですね。ある程度は知っているつもりではあったのですが、官公庁の発表しているデータなどを使って的確に問題点を指摘している手腕は素晴らしいものです。
これは国民のできるだけ多くの人たちに知って欲しい内容です。
できれば是非読んで欲しいですね。
アベノミクスがいかに創作された幻想であるかを知って衝撃を覚えることでしょう。

この本が結論としている内容の一部を紹介します。
1 2014年度の実質民間最終消費支出はリーマンショック時を超える下落率を記録した。
2 戦後初の2年度連続で実質民間最終消費支出が下がるという現象が起きた。
3 2015年度の実質民間最終支出は、アベノミクス開始前を下回った。要するに消費が冷え込んだ。
4 2015年度の実質GDPは2013年度を下回った。要するに3年分の成長率が1年分の成長率を下回った。
5 暦年実質GDPにおいて、同じ3年間で比較した場合、アベノミクスは民主党政権時代の約3分の1しか実質GDPを伸ばすことができなかった。
6 2016年12月8日、GDPが改定され、数字が大きくかさ上げされた。
7 例によって、「その他」という曖昧な項目が追加され、そのかさ上げ額はアベノミクス以降だけが桁違いに突出している。アベノミクス以前の「その他」のかさ上げ額は平均するとむしろマイナスであり、特に1990年代が大きくマイナスになっている。
8 改定によって、アベノミクスの失敗を象徴する5つの現象のうちの4つ、項目2,3,4,5が見事に消されている。それどころか2016年度の名目GDPは史上最高額を記録。
9 このかさ上げによって得られた名目GDPの成長率を使えば、安倍首相が唐突に表明した2020年度名目GDP600兆円のストーリーが完成する。
どうでしょう?
相当ひどい状況であり歴史を改ざんするような悪質さですよね。
さらにアベノミクスの成果とされている雇用の改善とか株価の上昇とか輸出の増加は本当なのでしょうか?
10 雇用改善は、人口減少、福祉分野の大幅な需要拡大、非正規雇用の増大によるもので、民主党政権時代から続いていた傾向。今は単純にその延長線上にあるだけでアベノミクスは無関係。
11 株価の上昇は日銀の異次元の金融緩和、ETF爆買いとGPIFによるもので実体経済とは無関係。出口がないため株価暴落は必至。
12 円安の恩恵を一番受けた製造業ですら、実質賃金は大きく下落。
13 賃上げ2%を達成できたのは全労働者のわずか5%に過ぎない。今年の春闘でも恩恵に与れるのはほんの一部だろう。

お分かりですよね。
アベノミクスがいかに欺瞞に満ちたハリボテであるかが。
貧困層が増大し、貯蓄することさえできない世帯が増加している実態がこれで理解できるでしょう。
さらに労働者のとどめを刺そうととしているのが「働き方改革」です。
経営者側の望む通りの政策を実行してきた安倍政権の集大成といっても良いでしょう。
最終的に全ての労働者を無制限に働かせることを目指しているのは間違いありません。もしこれが実行されたら日本の経済は壊滅的な状況になるでしょう。労働者は疲弊し生産性どころではなくなるのは必至です。目先の利害だけにとらわれる日本の経営陣は日本経済を破滅させると思います。
そして最も恐ろしいのがアベノミクスを支えてきた異次元の金融緩和。
この本の最後の警告。

14 日銀が金融緩和をやめると国債が暴落する可能性。
15 これと連動して円と株も暴落。
16 長期金利が上昇し国の膨大な借金返済が困難になる。
17 これらを避けるために金融緩和を継続すればどこかで円の信用が失われ超インフレの恐れがある。

出口のない異次元の金融緩和を始めた安倍政権は一体どうするつもりなのでしょう。
原発事故と同じように責任を取ることもなく逃げてしまうのでしょうか?
バカを見るのはいつも一般庶民ですが、そうなったのもそういう政権を選択してきた庶民の責任でもあるわけですね。

政治は関係ないとばかり、選挙の時にも真剣に考えようとしないツケは必ず回ってくると思いますよ。名ばかりの民主主義国家ではなく、賢い国民に支えられた本来の民主主義国家になって欲しいものです。
それから最近為政者、行政府のトップである安倍首相からとんでもない発言がありました。国会は改憲を議論する義務があるという発言です。
そんなことは当たり前のことで、国民から改憲の要望があった時は首相がとやかく言うまでもなく国会で議論されるでしょう。行政府の長たる首相がそんなことを言い出すのはとんでもない間違いです。ある時は衆参両院議長を差し置いて自分は立法府の長であると言ってみたり、とにかく国のシステムそのものが分かっていないのではないかと非常に不安になります。

改憲議論を進めるのは政府ではありません。あくまでも国民の代表たる国会議員が中心になって議論すべきなのであって政府がそれを決めるなどといった越権行為は許されません。政府はむしろ憲法を守る義務があるのであって、先頭に立って憲法改正を主導し自分の都合の良いように変える権利はないのです。

安倍首相には前科があり、昨年自民党内でまだ議論もされていない憲法改正案を勝手に読売新聞に発表し、国会で質問に立った野党議員に向かって改憲の内容の詳細は読売新聞を読めなどと前代未聞の答弁をしているのです。

この一例でも分かりますが今日本の政治は戦後かつて経験したことのないような異常な状態になっているのです。マスコミは本当に重大なことは伝えません。マスコミが大々的に報じる不倫や芸能界ネタ、スポーツネタの影に隠れて本当に重大なことが進行しているのです。

ほんの少しの時間でいいから冷静に自分の頭で状況を考えてみてください。そして想像力を働かせてください。このまま行って日本は一体どうなるのだろうかと。茹でガエルのように気づかないまま取り返しのつかない状況に追い込まれてしまったら遅いのです。